椅子の上の懺悔
Hilanderのウッドフレームチェアに腰を下ろす。 前回、勢いで買った「備品第1号」である。
座り心地は悪くない。 むしろ作業椅子としては理想的だ。背もたれの角度も丁度いい。
だが、この椅子に座って冷静にこれからの事について考える中、現実が見えた。
- 土地探し
- 整地
- 電気の引き込み
- 井戸掘り
- 建物の基礎
- 小屋の建築
- そして、サウナの設置
一つひとつは難しくないかもしれない。 だが、これら全部を「ゼロ」から、たった一人で積み上げるとなると話は別だ。
計算してみる。 週末だけの作業ですべてが順調に進んだとしても、ここでコーヒーを飲めるようになるのはいつだ?
……早くて三年後。
「三年」
その数字が頭に浮かんだ瞬間、ぼくは椅子の上で頭を抱えた。 これはあまりにも遠すぎる。
回想:幻の「プランA(新築サウナ)」
実は、このブログを始める前、もっと派手な計画があった。
土地を買ってそこに理想のプライベートサウナを新築する。 いわば「サウナ御殿」計画である。
図面も引いた。 設備も調べ尽くした。 電気ストーブのメーカーも、外気浴スペースの動線も、手元では完璧に完成していた。
問題は、お金だった。
公庫の融資は、実績のない個人ではせいぜい1,000万円が上限だ。 手持ち資金をすべて突っ込んでも、理想の施設には届かない。
無理をすれば建てること自体はできたかもしれない。 だが、その先にあるのは「返済」という地獄だ。 癒やしの場所を作るはずが、毎月の支払いに怯える場所になる。
返済に追われるサウナなど、ただの監獄である。 それは本末転倒だ。
だからプランAは捨てた。
葛藤:「金を使わない」という呪い
次に考えたのが山林開拓。 これがいままでこのブログで語ってきた「プランB」である。
きっかけは、YouTubeだった。
- 「起業で最初に大金を使う奴はバカだ」
そんな言葉を真に受けた。 もっともな意見だと思った。
「ならば、0円から始めよう」
二束三文の山を買って、自分で切り開けばいい。 電気も水もない場所から始める。それこそが起業家の正しい姿だと信じ込もうとしていた。
だが、椅子の上で冷静に考える。 金銭的リスクはたしかに小さい。 しかし、その代わりに背負うものがある。
時間だ。
三年。 下手をすれば、五年。
30代の貴重な時間を、ひたすら草を刈るだけで終えていいのか? 事業の形が見える前に、体力とモチベーションだけが削れていく未来がありありと浮かんだ。
それは、ぼくが求めていた「自由」とは違う気がした。
告白:隠していた「武器」
ここで、読者の皆様にひとつ白状しておくことがある。
実は、ぼくは「お金がない」わけではない。 約1,100万円の資金がある。
これは、親から貰ったお金でも、ギャンブルで勝った金でもない。 嫌な仕事に耐え、生活を削って積み上げたものだ。
いわば防衛資金。 人生で何かあったときの最後の砦。 だから、このプロジェクトでは「絶対に手を付けない」と決めていた。
だが、椅子の上で考えが変わった。
これは、ただ守るための貯金なのか? それとも、未来を早めるための「燃料」なのか?
全部を使う必要はない。 だが、「見せ金」として銀行の信用を作ることはできる。 あるいは、「ショートカット」のための投資に使うこともできる。
守るためのお金を、攻めるために使う。 そう考えた瞬間、視界が少し開けた気がした。
決断:時間を金で買う(プランC)
結論はシンプルだ。
- プランA(新築): お金がかかりすぎて死ぬ。
- プランB(山林): 時間がかかりすぎて死ぬ。
その中間に、答えがあった。
中古物件。 いわゆる、廃屋の再生である。
たとえば、800万円で家を買うとする。 それは「浪費」ではない。
【プランC:廃屋再生のメリット】
- 電気が通っている
- 水道がある
- 屋根がある
この三つが揃っているだけで、三年分の開拓作業を一気に飛ばせる。
それは「家を買う」というより、「時間を買う」行為だ。 天才ではない凡人が勝つには、お金で近道を買うしかない。
「起業に向いてない」と言われても構わない。 ぼくは最短でこの椅子に座って焚き火を見たいんだ。
結び:検索条件の変更
椅子から立ち上がり、スマホを取り出す。 物件検索サイトを開く。
条件フィルターをタップする。 [土地・山林] のチェックを外す。
代わりに、[中古住宅] にチェックを入れる。
探すべきは森じゃない。 廃屋だ。


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